稀風社ブログ

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稀風社は鈴木ちはね(id:suzuchiu)と三上春海(id:kamiharu)の同人誌発行所です。問い合わせはkifusha☆gmail.com(☆→@)へ。

『誰にもわからない短歌入門』試し読み(1/4) 永井祐×三上春海

『誰にもわからない短歌入門』試し読み企画一日目

 本日より四日間,稀風社の東京文フリ21新刊『誰にもわからない短歌入門』の本文より一部を試し読み用に当ブログに掲載していきます。
 一日目の今日は鈴木ちはね推薦の一首に対する三上春海の評を掲載します。

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「誰にもわからない短歌入門」(第21回東京文学フリマ新刊)

 稀風社の東京文学フリマ21の新刊「誰にもわからない短歌入門」を紹介します。

題・表紙

f:id:kamiharu:20151007191703j:plain
 新刊のタイトルは『誰にもわからない短歌入門』です。
 表紙イラスト・題字は伊丹小夜(帝国水素)さんに描いていただきました(ありがとうございます)。
 グレーのアンニュイでポップな表紙が目印です。文学フリマエ-20,どうぞよろしくお願いいたします。

内容

 『誰にもわからない短歌入門』は鈴木ちはねと三上春海がふたりあわせて76本の一首評を書き下ろした本です。

  • 扱われる歌は主として2010年以降に発表(出版)された,まだ既存のアンソロジーにはほとんど収録されていないものになります
  • 本文は往復書簡形式で構成されています
  • 最終的に38首の短歌(うちに詩,俳句,wikipdiaよりの引用文含む)が議論の俎上にあげられました

執筆手順

  1. 「これは」とおもう歌を選んで相手にメールで送る
  2. 600字から1200字程度の批評分(評)を書いて送り返してもらう
    • このとき評とともに次に扱う歌を送ってもらう
  3. もらった評も踏まえ自分の評を書く
    • この歌についてはここで終了
  4. 送ってもらった歌に評を書いて相手に送り返す
    • このとき評とともに相手に次に扱いたい歌を送る
  5. これを約10ヶ月にわたってくり返す

本書はいまの短歌世界を覗き見るためのアンソロジーとしても利用できます

 稀風社がいまみる短歌世界の風景を追体験していただける,同時代性がつよく反映された構成となっております。
 選歌には「公正さ」「バランスの良さ」ではなく主観的な「偏り」がつよく反映されています。

収録された作品の作者(うちにbotを含む)とその出典

笹井宏之『てんとろり』
永井祐『日本の中でたのしく暮らす』
平岡直子「あなたの有名な廃墟」(『率』7号)
瀬戸夏子『そのなかに心臓をつくって住みなさい』
大森静佳『てのひらを燃やす』
遠野サンフェイス『ビューティフルカーム』
管啓次郎『時制論 Agend'Ars4』
岡野大嗣『サイレンと犀』
内田遼乃「前髪ぱっつん症候群(シンドローム)」(『週刊俳句』第三三三号)
小原奈実「鳥の宴」(『穀物』創刊号)
木下こう『体温と雨』
服部恵典「十種の愛、九本のY染色体、八人の女、 七色のドロップス、六組の異性愛、 五つの声、四つの季節、三輪の花、二頭の獣、一つの大災害」(『羽根と根』3号)
浅羽佐和子『いつも空をみて』
雪舟えま『たんぽるぽる』
木下侑介(『短歌ください』)
偶然短歌bot(@g57577)
佐々木あらら「星野しずるの犬猿(いぬざる)短歌」
平田真紀『する・しない・する』
藪内亮輔「しなせる」(『京大短歌』二十号)
フラワーしげる『ビットとデジベル』
花山周子『風とマルス
望月裕二郎『あそこ』
井上法子「かわせみのように」(『早稲田短歌』四十三号)
堂園昌彦『やがて秋茄子へと到る』
黒崎恵未『ネクストサークル』
情田熱彦「大まじめ」(『稀風社の粉』)
はだし「なるまで」(『なんたる星』2015,2+3月号)
溺愛「ママ短歌」(『神大短歌』vol.1)
光森裕樹『うづまき管だより』
山本まとも「風水的によくないらしい」(amazo3の日記)
工藤玲音(「大学短歌バトル2015」)
服部真里子「樹は夜も」(『ノーザン・ラッシュvol.1(爬虫類)』)
菱木俊輔(第五十七回(二〇〇八年)左千夫短歌大会)
中村美智「嘘をつくぐらいなら死ぬ」(『文藝誌 ひきだし』第0号)
土岐友浩『Bootleg
二三川練「いっちゃやだってきみは言わない」(『象』第二号)
目黒哲朗『VSOP』
五島諭『緑の祠』


特別寄稿

 『誰にもわからない短歌入門』には第一回石井僚一短歌賞の「応募要項」と賞設立にあたっての石井僚一さんの宣言文「三万円――石井僚一短歌賞創設にあたって」が掲載されています。(応募要項は12月中にこちらのブログにも掲載いたしますが,宣言文の転載は行わない予定です。)
 また第一回石井僚一短歌賞の選考委員をつとめる石井僚一さん,寺井龍哉さんより,それぞれ「鈴木ちはね一首評」「三上春海一首評」の特別寄稿をいただきました。併せてご覧ください。

その他

1.通販・委託

 いまのところ文学フリマ後の自家通販の予定はありません。
 文学フリマが終わり次第,残部が多く出ましたら,東京では中野区「タコシェ」さま,関西圏では「書肆スウィートヒアアフター」さま,「葉ね文庫」さまに委託する予定です。札幌では来年の札幌文学フリマにて頒布する予定です。詳しくは続報をお待ちください。

2.試し読み

 文フリ当日までの間に『誰にもわからない短歌入門』の「試し読み」として,本文の一部をこちらのブログに掲載する予定です。

3.頒価

 頒価は700円を予定しています。

4.献本

 引用した作品の作者への献本は原則として行わない予定です。ご了承ください。

5.WEBカタログ

 文学フリマWEBカタログの稀風社ブースのUrlはこちらです。
稀風社 [第二十一回文学フリマ東京・詩歌|俳句・短歌・川柳] - 文学フリマWebカタログ+エントリー


 以上,どうぞよろしくお願いいたします。(三上)

 ものの本をひも解けば「短歌とは五句三十一音からなる定型詩である」とか、さまざま定義を目にすることができます。でも字余りや字足らずや、もっと大胆な破調があったってわたしたちはそれを短歌と呼ぶことができます(この本ではそういう例外的な作品をおおく扱ってゆきます)。「短歌とは何であるか」を定義したとしても、いくつもの例外的な短歌はその定義をかんたんにすり抜けてゆく。だから短歌という言葉を今日ここではじめて目にしているひとはもちろんとして、これまで多くの人々に「歌人」と呼ばれてきた人ですらもじつは「短歌とは何か」をまだ本当の意味では知っていません。(…)
 本書『誰にもわからない短歌入門』はそんなすべてのわたしたちのための入門書です。
   三上春海「まえがき」より

本書は「誰にもわからない短歌」の入門書であり、同時に「誰にもわからない(短歌の)入門書」でもある。冒頭で三上さんが述べたように、僕たちは、たぶんまだ誰も、短歌とは何かということを本当の意味ではわからないし、語ることができない。そして、僕や三上さんもまだわかっていないことを書くために、本書にはいわゆる「入門書」然とした章立て(ステップ)とか、戦略(ストラテジー)や体系(システム)だとか、そういうもののない、「わからない入門書」になっていった。でもそれはある意味当然で、世界はそもそも体系立っていないのだ。世界は、人間は、言葉は、短歌は、本当はわからない。そして現世の言葉では本当の意味で語りえない。ただそのわからないこと、語りえないものを、それでも僕たちは語ろうと試み続けなければならないのだ。
   鈴木ちはね「あとがき」より




【追記(2016.1)】

 『短歌』(角川文化振興財団)2016年1月号の時評で評者の阿波野巧也様に「誰にもわからない短歌入門」をとりあげていただきました。ありがとうございます。
 そのほかTwitter上での反応をまとめました。随時更新してゆく予定です。
togetter.com

稀風社配信第19回詠草一覧

【11/15配信詠草一覧】
1.夢さめてここにいま君のいないこと不思議なままにシーツの沃野
 投票:鈴木ちはね
 視聴者票:


2.眠りゆくあなたの頬に指をおく蟻いっぴきを潰す力で
 投票:情田熱彦
 視聴者票:あかみ、溺愛、maedarokugatu、azukipasand、ymmatomo、ohige100


3.野うさぎをうさぎへ変えるみたいな手品ザグレイテストヒッツをお前に
 投票:鈴木ちはね、石井僚一、三上春海、木屋瀬はしご
 視聴者票:maedarokugatu、nakamihaa、ymmatomo


4.君が代と思って歌い始めたらまだ前奏でそれでも僕は
 投票:石井僚一、寺井龍哉、三上春海、情田熱彦、木屋瀬はしご
 視聴者票:azukipasand、nakamihaa、ohige100、mitterion


5.窓ガラス割られる音で目がさめる 目があっているあなたはだあれ
 投票:寺井龍哉
 視聴者票:


6.校舎の外階段の踊り場を駆け下りるとき「落ちる!」って不安
 投票:
 視聴者票:あかみ、溺愛、mitterion


(自由詠、ひとり二首選)
(配信url USTREAM: 稀風社配信: 短歌をダシに雑談 . その他


【作者解題】
 1.寺井龍哉 2.石井僚一 3.情田熱彦 4.鈴木ちはね
 5.三上春海 6.木屋瀬はしご

東京文フリ21直前、稀風社配信第19回予告

 こんばんは。
 今週末、稀風社配信が復活します。

日時

 2015/11/15(日)、21時ころよりUstreamでの歌会のライブ配信を行います。
 音声のみ。ラジオのような形式での配信になります。
 コメント欄を利用しての評の投稿も随時募集しています。双方向でコミュニケーションをとりながら進行するのが稀風社配信の歌会になります。
 終了時間は23時ころになる予定です。
 配信後、一ヶ月間は録音した音声がWeb上に保存されます。

参加者

 配信にはいつものメンバー(鈴木ちはね、三上春海、情田熱彦、木屋瀬はしご)に加えて、第一回石井僚一短歌賞の選考委員をつとめてくださる、あのおふたりをゲストにお呼びしました。
 石井僚一さんは第14回配信(稀風社配信第14回予告+詠草一覧 - 稀風社ブログ)以来一年ぶりの参加です。このあいだ北大短歌会の歌会で自分のことを「過剰派」と言っていた石井さんですが、いい感じに過剰な歌があったらそれが石井さんの歌かもしれません。
 そして初めての参加となるのが寺井龍哉さんです。いま発売中の短歌研究2015年11月号には寺井さんの最新評論「不可知と慄然-戦後の終焉のまえに」が掲載されています。みなさん読みましょう。
 情田さんもいれて、第一回石井僚一短歌賞の選考委員が勢ぞろいとなります。
 応募しよう、石井さんの三万円を手にするのはわたしだ、われこそは、とおもっているかたには特に、三名の選考委員全員が参加するこの配信は、選考委員の手の内を知り、傾向と対策を練るための絶好の機会になるかもしれません。

その他

 歌会は無記名互選自由詠で行います。
 次の東京文フリや第一回石井僚一短歌賞の事前告知も行われるとおもいます。ここでしか聞けない裏話などもあるかもしれません(ないかもしれません)。Ustreamのコメント欄に石井さん宛の質問を書くと石井さんが答えてくれたりするかもしれません(しないかもしれません)。
 配信Urlは以下になる予定ですが、ひょっとすると変更があるかもしれません。最新情報はTwitter(@suzuchiuまたは@kmhr_t)でご確認ください。
http://www.ustream.tv/channel/%E7%A8%80%E9%A2%A8%E7%A4%BE%E9%85%8D%E4%BF%A1
 配信は今週の日曜日です。どうぞよろしくおねがいします。

【告知】第二十一回東京文学フリマ&第一回石井僚一短歌賞

 こんにちは,お久しぶりです,稀風社の三上春海です。

1.第二十一回文学フリマ(@東京平和島)に参加します

 新刊は『誰にもわからない短歌入門』というタイトルです。
 短歌一首をとりあげてあつかう評論を「一首評」と業界では呼ぶようなのですが,弊社の鈴木ちはねと三上春海がふたりであわせて80本ほど,今年のはじめから水面下でえんえんと書きつづけていたものをまとめた稀風社としてはややぶ厚めの本になります。現代短歌ガイドや入門書としての使用に耐えうるものをめざしました。
 「私は短歌を知り尽くしている」というかた以外のすべてのかたに読んでほしいなあとおもう,稀風社が自信をもっておおくりする一冊になりました。詳細についてはおいおいまたこのブログにて告知してまいります。
 その他既刊も頒布いたします。詳しくはこちら。開催は2015/11/23(月),入場無料です。
稀風社@第二十一回文学フリマ東京エ-20 - 文学フリマWebカタログ+エントリー

2.第一回石井僚一短歌賞を後援します

 『短歌研究』2015年11月号の歌壇ニュースにとりあげていただいているのでそちらも確認していただければとおもうのですが,昨年の短歌研究新人賞を受賞された石井僚一さんが主体となって,「第一回石井僚一短歌賞」を開催する運びとなりました。弊社はその後援をつとめさせていただきます。
 「賞とはなにか。賞とはなんだったのか」という問いに真摯に考えつめたすえ石井さんがたどりついた「自らが選者になってみないときっとわからない」「だからやろう!」というこの考えを,弊社一同全力で応援していきたいと考えております。
 受賞者には副賞として石井さんのポケットマネーから3万円が授与されます。
 選者は石井さんのほかに,石井さんの受賞と同じ年に現代短歌評論賞を受賞された寺井龍哉さんと,会社員の情田熱彦さんにつとめていただくことになりました。
 詳細な応募要項,また石井さんの第一回石井僚一短歌賞設立にあたっての声明文は第二十一回東京文学フリマで頒布する『誰にもわからない短歌入門』に掲載いたします。また応募要項については文学フリマ後に正式にこちらのブログにて告知する予定です。
 たくさんのご応募お待ちしております。