稀風社ブログ

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稀風社は鈴木ちはね(id:suzuchiu)と三上春海(id:kamiharu)の同人誌発行所です。問い合わせはkifusha☆gmail.com(☆→@)へ。

稀風社配信第17回詠草一覧+視聴者投稿短歌

 2015年2月8日、稀風社配信、テーマ詠「野球」
USTREAM: 稀風社配信: 短歌をダシに雑談 . その他
・録画
Ustream.tv: ユーザー suzuchiu_: 稀風社配信 第17回 その1, テーマ詠「野球」 三上春海(司会)・鈴木ちはね・情田熱彦・木屋瀬はしご・山本まとも(ゲスト・東北大学短歌会) 詠草:http://kifusha.hatenablog.com/entry/2015/02/08/211632...


【詠草一覧】
1.生きたまま家に帰ってきたひとの数の多さを争っている
 投票:鈴木ちはね、山本まとも
 視聴者票:YM_WT、maedarokugatu


2.姉さんの野球道具が散らばった撲殺現場に二塁ベースが
 投票:鈴木ちはね
 視聴者票:sayonara8989、uy_l800


3.待ちましょう消える魔球が消えるまで縫い目にあたる風をかぞえて
 投票:情田熱彦
 視聴者票:fumble__、maedarokugatu


4.港湾の組合から来ました 名野手の主な実績がストライキ
 投票:三上春海
 視聴者票:


5.飽食の申し子たちのスイングを背にチャーハンをよそう中華屋
 投票:山本まとも、木屋瀬はしご、情田熱彦
 視聴者票:


6.目を閉じてもわかる光に見ひらけば九回裏は始まっている
 投票:木屋瀬はしご
 視聴者票:YM_WT


7.オブ・ザ・ベースボールオブ・ザ・ベースボール、振りかざすなら君から来なよ
 投票:三上春海
 視聴者票:sayonara8989、uy_l800


【作者解題】
 1.三上春海、2.前田六月(視聴者投稿)、3.山本まとも
 4.木屋瀬はしご、5.情田熱彦、6.鈴木ちはね、7.吉田恭大(視聴者投稿)


【視聴者投稿の短歌と、そのコメント】
まどろみの終電ふいに理解する野球とベースボールの違い/コーヒーメイカー
・「「野球」と「ベースボール」が本当に何か違うのかどうかは問題ではなくて、最終電車に乗っている時の疲れとか眠気とかそういうものが極まった状態が、ふとした瞬間にある種の悟りや啓示をもたらす、そういうトランスの瞬間の歌なのだと思って読みました」(鈴木)


七回の裏が形見だ 呼ばれてもないのに僕がピンチランナー/加瀬ナカレ
・「「形見」は誰が遺したもので、また誰に与えられたものなのでしょう。一首で描かれているものはつかみとれていないのですが、気づいたら自分がピンチランナーとして立たされているという不条理と、形見という「死の痕跡」が一首の中で取り合わせられている、この取り合わせに惹かれるものがありました」(三上)


いつか辞めるサーバーを何に持ち替えようあすもあしたも生ビールを売る/にふぉー
・「スタジアムの「売り子」に着目しているのが個人的に好みです。重いサーバーを背負って急な階段を登ったり下りたり、片手で札束を握りしめたり大変そうな仕事ですよね。でも「あすもあしたも」はちょっと不思議な表現で、意図が正直よくわかりませんでした」(鈴木)
・「上の句は「売り子の仕事はいつか辞める。次は何を持つ仕事をしよう?」という意味にとればいいでしょうか。次の仕事でも持つ仕事がしたい、という思い込みが不思議な歌です。でも、サーバーは「持つ」というか「背負う」でしょうか。「いつか辞める」の目的語が省略されていたり、語法のつたなさがすこし気になります」(三上)


照り返る夏の墓標は金属で触れられもせず応援席に/ヤナギメバル
・「応援席に金属の卒塔婆みたいな何かが置かれていたら誰も触らないですよね。いやでも私は触るかもしれない。陽射しに照らされているから熱くなっているだろうに、墓標だからなんとなく冷たいような存在感がある」(木屋瀬)